ピート・ジョーンズ教授はオタゴ大学の生理学研究者です。
彼は主に心臓と脳におけるカルシウムの制御に焦点を当てて研究しております。この基本的なアプローチから、彼の研究は心不全、不整脈、発作性疾患、認知症といった複数の病態を解明しております。
これらの疾患は進行性、もしくは自然発生的であるがため、研究に独自の課題が立ちはだかります。心不全や認知症を発症している臓器において、その機能の全体像を把握するためには、長期間にわたるモニタリングが必要です。不整脈や発作のような散発的な症状は、見逃しがないよう継続的に記録する必要があります。
Kaha生体電気テレメータを実験に導入することで、ピートの研究室では、バッテリーの寿命や時間的制約に囚われず、脳波と心電図を記録できるようになりました。そのおかげで、研究の進歩に向けて新たな一歩を踏み出せました。
"Kahaテレメトリーシステムは信頼性が高く、長期的な投資として最適です"
これらの疾患において、疾患の経過に伴うカルシウムシグナル伝達の変化と、治療が軌道に乗るまでの時間を解明する新たなヒントが得られました。我々はピートと対談し、彼の仕事について、そしてKahaテレメトリーシステムをどのように評価しているか詳しく伺いました。
ピート・ジョーンズ教授とのインタビュー
私の研究では、カルシウムによる細胞の働きの制御方法に焦点を当てています。心臓と脳における、カルシウムのシグナル伝達不調の原因解明に取り組んでおります。
私の研究は心臓から始まりました。心収縮の原動力はカルシウムの動きです。カルシウムが放出されると、心臓の細胞全体が反応し、臓器単位で収縮します。そしてカルシウムが減少すると、心臓は弛緩します。
カルシウムの量が心臓の収縮の強さを決めるので、これは本当に重要なことです。つまり、運動しているときはカルシウムがたくさん放出され、強い収縮を引き起こします。一方、リズムをコントロールしたいときには、カルシウムをより頻繁に放出することができます。
多くの疾患では、これがうまくいかないケースがあります。例えば、心不全ではカルシウムが十分に放出されないので、心臓がうまく収縮しません。また、カルシウムを放出するタイミングを間違えると、拍動のタイミングも狂ってしまいます。これは不整脈の一般的な要因です。
さて、脳では細胞の収縮は起こりませんが、同じようにカルシウムが放出されることで細胞の興奮が促進されます。このカルシウムの放出は、細胞同士のコミュニケーション能力にも関わってきます。
繰り返しになりますが、脳内のカルシウム放出が変化すると、神経細胞の機能が変化します。これは発作や認知症とも関連しております。
カルシウムが放出されるタンパク質は、リアノジン受容体と呼ばれます。この受容体は細胞内のカルシウム貯蔵庫にあるタンパク質です。健康なときには、カルシウムは必要なときにだけ放出されます。つまり、心臓では1秒に1回程度、脳では細胞がコミュニケーションをとるのに十分な量です。もしタンパク質の構造に変化が生じると、カルシウムは間違ったタイミングで放出されます。その結果、心臓では不整脈が起こり、脳では神経細胞の活動が変化します。
我々はこのタンパク質の変異に多くの時間を費やして研究しました。不整脈を引き起こす変異はよく知られています。最近では、脳のてんかんやアルツハイマー病との関連も指摘されております。
カルシウムの変化と連動する電気信号を調査しているため、心電図から不整脈を、脳波記録から発作や認知症の傾向を追跡しています。
認知症、特にアルツハイマー型認知症が一般的に周知されておりますが、治療の選択肢が限られていることもよく知られています。
脳波から病態重篤化の兆候を早期に発見できるかもしれないと期待しております。これは理論上、臨床にも応用できます。より詳細な脳波モニターを使えば、最も早く病状が進行しそうな患者を特定できるかもしれません。
我々のアルツハイマー病に関する研究を応用することで、このような患者へこれまでより早い段階で薬物治療を行い、記憶障害の進行や合併症を食い止めることができるかもしれません。高齢化社会はニュージーランドにとって大きな課題です。国民の平均年齢は上がってきております。幸いにも、わが国では他の疾患がそれほど多く発生しておりませんが、さらなる高齢化の進行によって、より多くの神経変性疾患の治療を求められます。
我々はKahaシステムを用いて長時間の記録を行っています。多くの装置では短時間をブロックごとに記録することが一般的で、刺激を与えて反応を引き出すような研究には有用です。しかし、心不全や不整脈、神経変性疾患のように慢性的に進行する病気では、そのような「断片的な記録」では十分ではありません。
従来研究の大きな制約は、例えば動物に心筋梗塞を起こさせて心機能を変化させ、1〜2時間記録して終わりという形でした。その後、数日後や数週間後、数か月後に再び1〜2時間記録するのですが、その間の変化はすべて見逃してしまいます。現在では、連続記録によって心機能の経時的変化を追跡できるようになりました。
これは神経機能を考えるうえでさらに重要です。アルツハイマー病のような病気は数週間から数か月にわたって進行します。これまでの脳波研究、特にげっ歯類モデルでは「断片的な記録」か、刺激に対する応答を測る必要がありました。Kahaテレメトリーを使えば、自発的に起こる発作を長期間にわたって記録できます。その結果、発作が時間とともにどのように変化し、どのように蓄積し、最終的に動物の機能をどう変えるのかを明らかにすることができます。
我々が Kaha を選んだ最大の理由は、長期的な記録が可能な点です。以前はバッテリー駆動型のシステムを使用しており、それらは短期間の記録には適していました。しかし数か月の記録は不可能で、数週間が限界でした。 Kaha のような ワイヤレス充電によるテレメトリー が可能な点は大きな利点でした。
また、並行同時記録ができる 点も素晴らしいです。我々はEEGとECGを同時に記録しています。つまり、8匹の動物からEEGを、別の8匹からECGを並行して取得できます。テレメトリー自体は記録対象を選ばないため、1つのシステムから異なる生理現象を測定でき、測定対象を取捨選択する必要がありません。
さらに、我々がもともと ADInstrumentsのシステムに慣れていたことも重要でした。ソフトウェアやサポートが使い慣れたものであったため、導入後すぐに実験を始められたのは大きなメリットでした。
Kahaを選んだもう一つの大きなメリットは、充実したサポート体制でした。高度なシステムを使う以上、技術的な課題は避けられません。たとえば、長期記録が可能になるようなシステム設定や、多数の並行記録を行えるようにすること、そして膨大なデータの扱いなどです。
実際、EEGを20週間連続で記録すると、膨大なデータ量を処理しなければなりません。こうしたデータ量は通常想定されていないため、明確な処理方法が確立されておらず、多くのソフトウェアも対応できません。
その点でADInstrumentsと協力できたのは非常に有益でした。彼らはこの課題を理解し、サポートチームのメンバーと共に解析の効率化へ取り組むことができました。我々はデータをやり取りしながら新しいアルゴリズムを開発し、処理の自動化を進めています。まだ発展途上ではありますが、このサポートのおかげで、手作業の繰り返しに比べて大幅に時間を節約できています。
これまで、我々は不整脈、発作、認知症の基礎的なメカニズム解明に取り組みました。これからは、これらの治療法に移行します。
次のステップに向けて、すでにいくつかの研究を始めております。例えば、発作を起こすモデル動物に対する薬物治療があります。これも、長期的な実験で介入を行いつつ追跡していきます。