実験機器に信頼性を
小動物の侵襲的圧力測定において適切なツール一式を揃えることは、取得するデータの信頼性を担保するために不可欠です。長期的な試験では特に重視されます。
この記事では実験内容に合った精度、信頼性、そして感度を有する機器を確実に選択できるよう、二種類のカテーテルについて特徴を説明します。圧力カテーテルをすでに使いこなしている方、これから使い始める方、どなたにも実験で役立つ情報となれば幸いです。
ソリッドステートタイプの圧力カテーテルはリアルタイム圧力測定のゴールドスタンダードで、精度と信頼性は液体充填型より優れております。液体充填型(またはゲル充填型)カテーテルは、費用対効果が高く堅牢な選択肢です。この2種類を比較し、ソリッドステート圧力カテーテルを選択する際のポイントを詳しく学びましょう。
項目:
- 仕様
- データ精度
- 実験用途
- 予算
図1:Kahaによるソリッドステートテレメータ圧力記録セットアップ図。Kaha圧力テレメータは、2Fr Millar Mikro-Tip®ソリッドステート圧センサーと統合されたワイヤレスパワーテクノロジーを利用しています。このソリッドステートトランスデューサーは目的の部位までカテーテルを挿入し、先端で圧力を記録します。これに対して液体充填型圧力トランスデューサーは、チューブを通して実際のトランスデューサーへ圧力を伝達します。
仕様
シグナル伝達部位
シグナルの伝達方法を理解するためには、各センサーの機能を認識することが重要です。
- ソリッドステート圧力カテーテルは、カテーテル先端にシグナルトランスデューサーとMEMSセンサー(微小電子機械システムセンサー。ここで使用されているのは、圧力を受けるたびに屈曲するシリコンチップ)を内蔵しています。センサーは圧力部位と直接接触します。
- 液体充填カテーテルは間接的な測定を行い、チューブを介して実際のトランスデューサへシグナルを伝送しており、トランスデューサー自身は測定部位から離れています。
お手入れ
洗浄と取り扱いは機器の忠実性を確保するために不可欠です。
- ソリッドステートセンサーの周囲に血液凝固が生じることはありますが、それによる信号の減衰はごくわずかです。機器の適切な洗浄、慎重な取り扱い、そして適切な保管により、機器の寿命を延ばします。
- 液体充填カテーテルにはゲルチップがあり、液漏れや根詰まりによる悪影響を防ぐため、抜去後にゲルチップを再充填する必要があります。このプロセスは、複数の試験でカテーテルを再利用する場合に必須であり、再充填用の注入器が必要です。
データの正確性
研究者が液体充填式からソリッドステート圧力カテーテルへアップグレードを選択する際、最大の動機となるのが精度です。
- ソリッドステート圧力カテーテルは目的の部位で直接測定するため、侵襲的な血圧モニタリングにおいてより質の高いデータを得ることができます。
- 液体充填カテーテルは圧力部位から離れたゲルまたは液体媒体を介した圧力波信号伝達によって、間接的に圧力を測定しています。基本的にシグナルの感度はソリッドステート圧力カテーテルより低くなります。
減衰
図2:カテーテル先端のソリッドステート圧力センサーの利点。
A) Kaha Sciences社製圧力テレメータのカテーテル先端におけるMillar Mikro-Tip®圧力センサーの位置と寸法。B) 液体を充填したカテーテル(紫色)とMillar Mikro-Tip®圧力センサー(オレンジ色)を使用して記録した血圧波形の比較。C) 脳内に25cmのカテーテルを挿入し、Kaha Sciences社製圧力テレメータ(TRM54P)を用いて記録した頭蓋内圧波形。D) Kaha Sciences社製圧力・生体電位テレメータ(TRM54PB)を埋め込んだラットにおける、4日後(上)と48日後(下)の血圧とECG記録。
ソリッドステート圧力カテーテルは、高精度で再現性の高いシグナルを長期的に測定します。心室圧等で顕著なdicrotic notch : 重複切痕も記録できるため、繊細な波形をモニタリングするためには必須なツールです。このような波形は通常、液体充填カテーテルだと著しい信号減衰によって失われます。
また、液体充填カテーテルは、気泡の形成やゲル/流体特性の変化によってシグナルの減衰やなまりが発生します。
アーチファクト
ノイズやアーチファクトは血圧波形を大きく歪ませ、データの質を低下させます。
- ソリッドステート圧力カテーテルによって記録される圧力波形は適切な洗浄を行えば、運動、凝固、重力、カテーテル洗浄、カテーテル屈曲等の影響を受けません。つまり、真の圧力波形を表現できます。
- 流体を充填したカテーテルでは上述のアーチファクトによって、圧力波形の測定に影響される可能性があるため、こうしたデータの信頼性が低下し、精度が損なわれます。
位相シフト
位相シフトは、正確なリアルタイムの生理学的測定が必要な研究にとって有害です。これは、脈動イベントとそのイベントの測定が同期していない場合に発生します。
- ソリッドステートカテーテルは目的の部位で圧力信号を直接伝達するため、位相シフトの影響を受けません。
- 液体充填カテーテルから記録されたデータは、位相シフトの影響を受ける可能性があります。カテーテルチューブの長さによって圧力がトランスデューサーに到達するまで時間差が発生するためです。
周波数応答
周波数応答は、圧力波形の減衰が最小となる周波数範囲を示します。侵襲的血圧試験では、動物モデル(特にラットやマウス)の心拍数の上昇を測定するのに十分な高い周波数応答が必要です。
- ソリッドステート圧力カテーテルは信号の減衰を経験することなくキロヘルツ帯域の周波数を測定できます。
- 液体充填カテーテルでは高い周波数で波形の振幅が失われ、データの質に影響を与えることがあります。
実験アプリケーション
新しい実験を設定する場合、または侵襲的圧力モニタリング機器のアップグレードに関心がある場合、複数のアプリケーションに適した機器に投資することは、ラボの将来性を高める上で有利です。
- ソリッドステート圧力カテーテルの感度は、動脈圧、静脈圧、心室圧、頭蓋内圧の測定に適しています。
液体充填カテーテルは一般的に、上記のような心臓以外の循環器研究で使用できる感度と信号忠実度を持ちません。
予算
研究に適した機器を選択する際、価格は常に重要な要素です。
- ソリッドステート圧力センサーは、高級な製品ですがそれに見合うデータ品質を備えています。
- 液体充填カテーテルは費用対効果が高く、堅牢で、広く入手可能です。
結論:ソリッドステート圧力テレメータの利点
信頼性と精度が求められる実験において、ソリッドステート圧力センサー式のカテーテルを選ぶことは重要です。液体充填カテーテルからソリッドステート圧力カテーテルへアップグレードすることで、データ品質が大幅に向上します。
ソリッドステート圧力カテーテルは下記の特徴を有します:
- 適切なケアと保管を行えば再使用可能。
- 高精度で波形の減衰が少ないため、正確な収縮期および拡張期の圧力測定が可能。
- アーチファクトや位相シフトの影響を受けない。
- キロヘルツ帯の周波数測定に適しており、小動物モデルで波形の忠実度を維持するほど周波数応答が高い。
- 頭蓋内圧、膀胱、腫瘍の記録など、心圧モニタリング以外の用途にも使用可能。
当社の推奨
長期的な侵襲的圧力研究にはKaha圧力テレメータをお勧めします。テレメトリーは、ソリッドステートセンサーテクノロジーを利用することで比類のないデータ品質を提供しながら、研究に様々な利点をもたらします。ソリッドステート圧力センサーの感度と充電式テレメーター本体の信頼性により、ラットの長期侵襲的血圧モニタリングに理想的なソリューションとなります。
Kahaの圧力テレメータのカテーテル先端には、ソリッドステートセンサーとして標準的なMillar Mikro-Tipカテーテルテクノロジーを採用しております。これにより、心内圧から頭蓋内圧まで、高精度で高感度の記録を測定する能力と信頼性を得ております。
当社では、単一もしくは二重圧力から、生体電位/圧力テレメータまたは交感神経活動/圧力テレメータと組み合わせたものまで、様々なアプリケーションニーズに対応した圧力テレメータを提供しております。圧力テレメータの3Dによる挿入イメージはこちら。
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圧力テレメータとお客様の研究やワークフローの適性についてご相談ください。
参考文献
- イラスト:ADInstruments
- Thakkar, P. et al. Hypertensive Response to Ischemic Stroke in the Normotensive Wistar Rat: Mechanisms and Therapeutic Relevance. Stroke 50, 2522–2530 (2019).
- 固相圧力カテーテル vs. 流体充填圧力カテーテル:違いを知る by ADInstruments
その他のリソース
